こんにちは
関原デンタルオフィスです
近年、TCH(上下歯列接触癖)という習癖で、お口のトラブルに悩まされている方が増えてきています。この習慣やスマホやゲーム、PC作業をしているに集中している時に起こりやすく、現在病の一種と捉えることもできます。TCH自体が歯周病やむし歯、顎関節症といった病気ではないことから、人によっては気付かなかったり、気付いても軽く見て放置したりするケースがとても多いです。今回はそんなTCHの特徴や原因、改善する方法などを武蔵小杉の関原デンタルオフィスがわかりやすく解説をします。
TCHとは?(Tooth Contacting Habitの略)
はじめに、TCHの基本事項を確認しておきましょう。TCH(Tooth Contacting Habit)とは、日本語で上下歯列接触癖と呼ばれるもので、文字通り上下の歯列が接触する習癖を指します。そもそも歯というのは、上下で接触することでその役割を果たすため、TCHには何ら問題がないように感じられるかもしれませんが、実際はそうではありません。なぜなら私たちの歯列というのは、上下で接触していない状態が普通だからです。
上下の歯列が接触するのは20分程度?
本来、上下の歯列は1日の中で20分程度しか接触していないと言われています。20分というのは、言うまでもなく食べ物を噛む時です。食事の際も常に歯が接触しているわけではないので、24時間という単位で見ても歯と歯が当たっている時間は20分程度にとどまります。逆に言うと、私たちの歯や歯槽骨、顎関節は、上下の歯列が1日20分くらい接触する圧力に耐えられるような組織となっています。TCHによってその時間が極端に長くなると、歯や歯槽骨、顎関節に何らかの異常が生じます。
TCHの原因
TCHの根本的な原因は、上下の歯列が不必要に接触することにありますが、それが何によって誘発されるのかも気になるところです。冒頭でも述べたように、1日の中でスマホやゲーム、パソコンなどを操作している時間が長い人はTCHが誘発されやすいため注意が必要です。その理由は以下の通りです。
物事に集中すると歯ぎしり・食いしばりが起こりやすい
パソコンでデスクワークをしている時に大きなストレスがかかると、歯ぎしり・食いしばりといったブラキシズムが起こりやすくなります。ゲームに集中している時も思うようなプレイができず、何度もやり直しをしていく中で、上下の歯をギリギリと擦り合わせてしまうことがありますよね。こうした物事に集中している時の歯ぎしり・食いしばりは、TCHの主な原因のひとつとして挙げられます。
スマホ首・ストレートネックに要注意
スマホを操作している時は、画面をのぞき込むような形となるため、前傾姿勢となりやすいです。この状態だと、胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)という首を支える筋肉に過剰な負担がかかって、頭痛や肩こり、眼精疲労を引き起こすことがあります。いわゆるスマホ首やストレートネックと呼ばれるものですね。実はこの体制では、下顎が上方に押し上げられたような形となるため、上下の歯列で接触しやすくなるのです。この症状は、スマホだけでなく、パソコン操作やゲームをプレイしている時も生じやすくなっている点に注意が必要です。
上下の歯列にはすき間がある?
TCHの原因を考える上で、もうひとつ考慮しなければならないものがあります。それは上下の歯列のすき間です。正常な人の歯並び・噛み合わせでは、上下の歯列に適度なすき間があります。一般的には、1~2mmのすき間があり、これを専門的に安静空隙(あんせいくうげき)といいます。自然に口を閉じてリラックスした時に、上下の歯列に1~2mmのすき間があれば、不要な歯の接触は起こりにくいですが、その隙間がない、もしくは少ない場合は、TCHが起こりやすいといえます。ご自身の安静空隙が気になる場合は、鏡を見て確認してみましょう。ちなみに、スマホやパソコンを操作している時間が長いことで、安静空隙が習慣的に閉じてしまう可能性もあります。そうしたケースでは、まずスマホやパソコンに向かっている時の姿勢や下顎の位置を改善する必要があるでしょう。
TCHがもたらす口腔内の症状
TCHがあると、口腔内に次に挙げるような症状が認められます。
【症状1】冷たいものがしみる知覚過敏
TCHで歯のエナメル質が摩耗したり、歯の神経が過敏になったりしていると、冷たいものがキーンとしみる知覚過敏になりやすいです。普段から頻繁に歯が接触している部分で冷たい飲みものや食べものがしみるという場合は、TCHが原因かもしれません。
【症状2】歯や歯茎が痛い
TCHによって上下の歯列が強く接触していると、歯や歯茎、顎の骨に炎症反応を引き起こします。その結果、歯や歯茎が痛いと感じることもあります。
【症状3】顎関節が痛い
顎の関節やその周りの筋肉に痛みが生じたり、口を開け閉めする度にカクカク、ジャリジャリといった雑音が鳴ったりする場合は、顎関節症を発症している可能性があります。顎関節症もTCHが原因で起こりやすい症状のひとつです。
【症状4】口内炎や舌痛症
TCHでは、その他にも口内炎が繰り返しできたり、舌に痛みを感じる舌痛症(ぜっつうしょう)を発症したりすることがあります。一見すると上下の歯列の接触とは無関係なように思えますが、TCHの方によく見られる症状であるのは事実です。
TCHのチェック法、改善方
ここまでは、TCHの特徴や原因、症状について解説してきましたが、ご自身の症状が当てはまるのかどうかやTCHを改善する方法も気になることかと思います。
TCHのチェック法
TCHをセルフチェックする方法は、とてもシンプルです。まずは椅子に座った状態で姿勢を正し、正面を真っすぐ向きます。続いて、口を軽く閉じてリラックスしてください。この時に上下の歯列が接触していたり、すき間がある状態を5分以上維持できなかったりする場合は、TCHが疑われます。
正確な診断は歯科医院で
上記はあくまでTCHをセルフチェックする方法なので、正確な診断は専門家に任せた方が良いです。上段で取り上げたTCHの症状に該当するものがあり、セルフチェックでも歯列の接触が認められる場合は、大きなトラブルに発展する前に歯科医院を受診しましょう。
TCHの改善方法
TCHを改善するためには、上下の歯列が接触する癖を意識的に取り除く必要があります。スマホやパソコンを見ている時は、「歯をつけない」「リラックスする」ことを意識しながら、姿勢も正すよう努めてください。歯ぎしり・食いしばりの癖がある方は、歯科医院でのスプリント療法が効果的です。歯並び・噛み合わせの問題によってTCHが起こりやすくなっている方も歯科医院での治療が改善の道を開いてくれることもあります。いずれにせよ日常的な習慣や意識を変えるだけでは改善できないTCHは、歯科医師によるサポートを受けた方が良いといえます。
まとめ
今回は、TCH(上下歯列接触癖)について解説しました。上下の歯列が不必要に接触するTCHは、放置していると歯や歯周組織、顎関節に深刻な悪影響を及ぼすことがあるため、この症状に心当たりのある方はいつでもお気軽に当院までご相談ください。もちろん、軽度のTCHであればご自身の取り組みで改善が見込めることがありますが、そうではないケースの場合は、専門家によるサポートやアドバイス、場合によっては歯科治療が必要となります。